元記事:https://www.theaquarian.com/2019/06/18/frank-iero-strikes-back/
Frank Iero Strikes Back
The Aquarian Weekly
記者:Vinny Cecolini
2019/6/18
毎晩、フランク・アイエロは子供たちに絵本か歌のどちらかを選ばせている。子供たちが本を選ぶことはほとんどなく、"Best Friends Forever (But Not Now) "で始まる歌を一緒に歌うことを選ぶ。9歳になる娘のリリーが双子の妹チェリーにからかわれた時の仕返しとして作ったこの曲は、シンガーソングライターのアイエロがギターを手にして双子と7歳になる息子のマイルズと一緒に作り上げた。アイエロの自宅スタジオでレコーディングし、家族でミュージックビデオも撮影した。子供たちのトリオは、ベッドタイムの歌だけでは満足できないというジレンマを抱え始めていた。アイエロのソロアルバム『Stomachaches』(2014年、Workhorse Music Group)や『Parachutes』(2016年、BMG/Vagrant)に収録されている曲は、彼らの年齢にはまだ早かったからだ。彼が解決策とした "A New Day's Coming "は、新たにリリースする3枚目のソロアルバム『Barriers』(UNFD)の、高揚感と希望に満ちたスピリチュアルなオープニング・トラックだ。
アイエロの新しいバンドThe Future Violentsとレコーディングされたこのアルバムは、いわゆるハッピーアンセムを集めたものではない。このアルバムの14曲のトラックを通して、アイエロは様々なエモーションのパレットからだけでなく、彼の数十年に渡る音楽キャリアで得た様々な音楽スタイルからもインスピレーションを受けている。生々しく、内省的で、懺悔的で、セラピー的なこのアルバムは、コンセプトアルバムではないものの、各トラックは壁を打ち砕き、破るという共通のテーマを持っている。
フィラデルフィアのFoundryのバックステージで、アイエロは複雑な気持ちでいた。1ヶ月に及ぶヘッドライン・ツアーが始まり、いよいよ『Barriers』がリリースされるというのに、彼は家族と離れているのだ。彼は子供たちを学校に見送ってからツアーに出てきたが、次に子供たちに会うのは数日後になるだろう。幸いなことにこのツアーは最初の5回のショーの後、ニュージャージーの自宅の近くで子供たちとオフの日を過ごすことができるようにルートが組まれている。子供たちは、なぜ父親がしばらく留守にしなければならないのか疑問を持ち始めている。彼らはアイエロが担っている職業に感銘を受けるにはまだ幼すぎるかもしれない。それでも彼らは、学校へ行く前に家にやってきた大きなピカピカのツアーバスには興奮していた。
「息子は、なんで近所のパパたちはみんなツアーバスで出勤しないの?と不思議がってるよ。家族と離れるのは嫌だけど、9時から5時までの普通の仕事をして通勤時間も含めたら、毎日家族と一緒にいる時間は限られていただろうな。ツアーの合間は、俺には一日中子供たちと一緒に過ごせる時間があるんだ」とアイエロは笑った。
アイエロの最も知られているバンド、My Chemical Romanceが2013年に解散したとき、彼はソロ活動については考えていなかった。別のバンドでギタリストになりたいと思っていただけだった。Rob Hughesと結成したポストハードコアバンドLeathermouthでは一時期それが実現したが、そのバンドはたった1枚のリリースで解散し、終止符を打った。
「興味を持てないソロプロジェクトになっちゃったんだ」と彼は説明する。
アイエロは人に聞かせるためではなく曲を作ったり、レコーディングしたりもしていた。そのテープを友人がレコード会社に送った時、それは変わった。その最初の曲をまとめたものはStomachachesとしてレコーディングされリリースされ、"Frnkiero andthe Cellabration "とクレジットされた。2ndアルバム『Parachutes』はFrank Iero and The Patienceとされている。BarriersはFrank Iero and the Future Violentsによって製作されている。名前の変更は一種の内部ジョークなのと、バンドメンバーの変更も表している。彼の現在の "ドリーム バンド"は、ギタリストのエヴァン・ネスター、ドラマーのタッカー・ルール(Thursday)、ベーシストのマット・アームストロング、キーボードのケイリー・ゴールドスワーシーをフィーチャーしている。The Future Violentsというバンド名は、実はオーストラリアのシドニーに向かう飛行機の中でのある勘違いから思いついたという。
「セレンディピティ(*偶然の産物)だったんだ。客室乗務員にバンドをやってるんですか?と聞かれて『はい』と答えた。バンド名を聞かれたので俺は『Frank Iero and The Patience』と答えた。彼は『フューチャー・ヴァイオレンツ?変わった名前ですね』って。この二つを間違えるなんてあると思うか?でもこういうのは宇宙が与えてくれるものだって信じてるから、ちゃんと聞いてなかったら気づかなかっただろうな。意味があるか分からなかったけど、名前をメモしておいた。2016年に経験した事故のことを考えだした時、それは俺のすべてを変えた残酷で強烈な出来事だった。まるで湖に岩を投げて、そこから生じる波紋を見てるみたいだった。俺の人生は変わった。もう何も同じようにはいかない...The Future Violentsがしっくりきた。」アイエロは笑った。
シンガーソングライターが死に直面したのは、2016年10月13日木曜日の午後のことだった。アイエロ、ギタリストのエヴァン・ネスター、ドラマーのマット・オルソン、マネージャーのポール・クレッグ、そしてアイエロの広報担当は、シドニーのツイッター社の前に到着した。彼らがバンから荷物を降ろしていた時、突然バスが彼らに追突した。アイエロはバスのフロントバンパーの下で止まるまで9フィート(*約3m弱)引きずられた。ネスターが「足の感覚がない」と叫び、クレッグの足から大量の血が広がった。幸いなことに、事故を目撃していた警察官が駆けつけてクレッグの足に止血帯を巻いてくれたので、彼は足と命を取り留めた。アイエロ、ネスター、クレッグの3人は重体で病院に緊急搬送され、2週間入院してから更なる治療のために帰国した。誰も誰も死なず、全員が退院はしたが、アイエロは自分が生き残ったことへの後悔の念を持っているかもしれないと認めている。
「トラウマになるような出来事を経験した時、人には3つのことが起こるんだ」とアイエロは説明する。「1つは、その話を伝えるために生き残ったってことにショックを受ける。2つ目は、だいたいの人が一度は死にたくなる。俺はもう死に直面したってのに、もう一度そうなることを望んでる。すごく最悪だ。3つ目に、何が現実なのか考え始めた。俺は生き残ったのか、それともこれは俺の潜在意識が見せてるだけなのか。自分にとっての現実を具現化しなきゃなんだ。持ってる手でベストを尽くさなくちゃなんだ」
アイエロの人生は一変させられた。セラピーや彼の感情を揺さぶり魂を探す音楽のセラピー効果でさえも。
「ああいうことから戻ってきたとき、『よし、このことを曲に書くぞ』なんて言えない」と彼は続けた。「そうはいかないんだ。新しい方法を考えなくちゃならない。俺は今でも創作ができてラッキーだよ。プロセスは良くも悪くもないな。物事の考え方が違う。すべてのものの味が違う。まだ家族と過ごす時間があるのは良かった。 長い間、俺の人生の重要な部分を担ってきたことを今も続けている。でも決まっていた運命から騙されてるように感じることもある」
ソロアーティストとして、アイエロは本質からやり直した。Barriersのリリースとツアー開始までの数週間は、目まぐるしく動いた。メディアへの出演、インタビュー、写真撮影、その他様々なプロモーションは果てしなく続くかのようだった。それは焦点を当てられ、注目されたことの結果だった。
「このレコードのカバーは俺の顔なんだけど、これは今までやったことなかったんだ 」と彼は言う。「このレコードは自分の壁を打ち崩すことをテーマにしてるから、そうする必要があったんだ。マネージャーと相談しててカバーをどうするかと聞かれたから、俺は自分のアイデアを伝えた。マネージャーは「お前の顔じゃなきゃだめだって分かってるだろ」と言った。俺は「ああ、くそ」って答えたよ。でも、彼の言う通りだった。自分の携帯で撮った自撮りなんだ。一番怖くてやりたくなかったんだけど、出来上がったものは気に入ってるよ」
Barriersは、かつてNirvanaやPixiesなどの作品を担当した変わり者スティーブ・アルビニがレコーディングとミックスを担当したアイエロのセカンドアルバムだ。
「驚いたことは、彼が制作するんじゃなくて彼が自分にプロデューサーになることを強制することだった」とアイエロは説明する。「責任と最終的な自信の両方がのしかかってくるよ。お前の音楽をお前以上に理解できる者はいないって考え方なんだ。スタジオで逃れられない質問を受けて、他の人を見てみるとその人はまた違う人を見てて、そいつはスティーブを見てる。それでも彼は何も教えてくれない。そしてこう言う。『私は知らないよ?お前はどう思うんだ?』」
アルビニは精神科医や大学教授に似ていて、質問には決して直接答えを出さない。
「イライラすることもあるけど、それは必要なことだった」とシンガーソングライターは続ける。「Barriersでは、自分が決めた条件の中で作品を作って完成させなきゃならないことが分かってた。そのためには、天才的な才能を持っていて、俺がそこに投げ込んだものを何でも取り込んでくれることができる人が必要だったんだ。」
「俺は音楽を色で聞いていて、その歌が頭の中でどう聞こえるか分かってる。だからもし俺が何かを参考にするのを止めて音楽を追いたいなら、それには誰か能力のある人が必要なんだ」
アルバムには事故や自身の以前のバンドへの言及も含まれていて、既にヒットシングルとミュージックビデオ「Young and Doomed」を産み出している。
「アーティストがレコードを書くときには、そのアーティストがどこに向かっているのか、そしてどこを辿ってきたのかを示す曲が少なくとも2曲は入る」と彼は説明する。「Young and Doomed "はその架け橋となる曲だ。俺が今までやってきたことと結びついている。急な変化じゃないけど何か違うことが起きていることに触れているんだ。」
『Barriers』は、幅広いジャンルのヘヴィ・ミュージックをフォーカスしてるインディペンデントレーベルUNFDからのアイエロの初リリースとなる。アイエロの他にもNorthlane、Tonight Alive、Hands Like Houses、In Hearts Wakeなどが所属している。
「俺はこれを悪い経験にはしたくない」とアイエロは微笑む。「今までいろんなレーベルと素晴らしい経験や散々な経験をしてきた。でも、俺のこれまでの経験の中では最高だったし、レコードはまだ出てもいないんだ」
夜の公演のサウンドチェックまであと数分になり、シンガーはシングルとして検討されている "Basement Eyes "と "The Host "について語った。
「Basement Eyes はすぐにまとまった曲の一つだった。すべてが一度に出てきた。歌って恋愛みたいなものなんだ。努力しなければならないものもあれば、助けになるのと同じくらい傷つくものもあるし、完全なパッケージになっているものもある。Basement Eyesをバンドに見せたとき、全員が『ああ、何をすればいいかわかった』と言ってくれたんだ」
「The Host は義理の弟のエヴァンのリフからスタートした。彼は『これ弾いてるけど、すごくクールだね。でもこの曲が何の話なのか全然分からないんだ』って。スタジオでやるまではうまくまとめられてなかったんだけど、それ以来この曲はレコードの中で好きな曲の1つになったよ。」
アイエロはバンドメンバーの一員になる準備をして自分が乗り越えてきたすべての障害について考えるうちに、ソングライティングとパフォーマンスが自分の血筋であることに気づく。
「これが唯一の理由だな」と彼は言う。「この業界は、自分のすべての愛と時間と金...血と汗と涙を注ぎ込んでも、決して愛してくれはしない。俺にとっては当たり前のことだ」
Barriersは11月に完成したものの、リリースまでに春の終わりまでかかってしまった。
"レコードを書いて録音を終えると、アルバムが出て人が聞いてくれるまでの間は奇妙な煉獄にいるみたいになる。今はツアーが始まってレコードも出るところだから、興奮してるよ。音楽に注ぎ込んだすべての作業を終えて、やっとシェアすることができる。それを信じてるけど、自分がおかしかったのかどうかを知りたいとも思ってるよ」
ハードコアなファンのためにFrank Iero and The Violentsは "ネバーエンダー・エクスペリエンス "を提供している。パッケージには、限定Tシャツ、Neverenderのラミネートカード、サイン入りFuture Violentsのセットリスト、各会場への早期入場、グッズスタンドへの早期入場、バンドとの写真撮影、ライヴ中には演奏されない曲のミニセットが含まれている。
「俺たちが3枚のアルバムの中から選んだ曲の中から自分が演奏したい曲のウィッシュリストを作ったんだ。どの会場でも演奏できる曲よりもずっと長いやつだ。俺たちは全曲を練習したよ。ライヴが始まる前にやれないセットをやったり、実験的に色々な方法で音楽を紹介できたらクールだと思う。それを試してみたいんだ。」
Frank Iero and The Violentsのサウンドチェックが始まる時には、既に2ダース以上のファンが会場の外に並んでいる。開場まで4時間以上あるにもかかわらず、チケットを持っている人たちはその場にいることに興奮している。何とも言えない特別な雰囲気が漂っていて、それをできるだけステージの前で体験したいと思っているのだ。
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