彼は歌詞的にあらゆる書き方に挑戦した。メタファーを使って書こうとしたが、リアリティーが欠けてることを感じた。その代わりに彼曰く〝個人的な視点から曲を書くしかなかった。〟しかしそれが問題になる時も。
〝自分にブレーキをかけた時があった〟と彼。〝書いてる途中で「これって本心を曝け出しすぎてるかな」と思った時が。僕は基本的にプライベートな人間だけど、歌詞を書いたり歌ったりしてるとできるだけ自分を曝け出す時こそいい曲が作れる。ちょっと個人的になりすぎ、曝け出しすぎと思ったこともあったけど、僕は音楽を聴くとアーティストの本心が知りたいから、その気持ちを乗り越えるしかなかった。
アルバムにはRayの家族に関する曲がたくさん。〝Walking In Circlesは妻のことと、妻と一生一緒にいたいという気持ちについてだ〟と彼。〝Remember The Laughterは息子とどうお別れを言えばいいか、亡くなる前に何を伝えるかについて考えた曲。〟
〝妻とは世界の現状や子供をどんな人間に育てて欲しいか、息子が人とどう接して欲しいかについてよく話し合ったりする。その内容が全てアルバムに入ってる。〟
その結果、政治的な内容も入ってる。最近のTwitter投稿を見れば、Rayのトランプ政権への不安が明確だ。〝For The Last Embraceはニュースで見てることについて、そしてHope For The WorldはFergusonとそこの暴動について書いた。〟
Rayの幼少期もアルバムに。両親との関係も〝The Great Beyondは一人の息子が旅に出て、何年も親と話さない、そして実家に戻ると親ともっと時間を過ごせばよかったと後悔することについてだ。自分も同じ気持ちだよ、もっと親に感謝するべきだったと後悔してる。〟
母親については感情的に話す。〝家族の大黒柱だ〟と呼んで、母親からの誕生日カードでさえ涙を誘うという。〝母は感情を書いて表現した。僕も同じだ。言葉はあまり得意じゃないし、静かだし。でもこのアルバムは安心できるスペースで自分の考えを表現できる機会を与えてくれた。すごく自由になれるようなやり方だった。〟
マイケミカルロマンスの解散からポジティブなことがあるとしたら、キーメンバーの性格が表に出たことだ。Frankの音楽は彼と同じように直感的で心を込めた、その瞬間を精一杯生きてる。Gerardの音楽は静かに野心的でアーティスティック。Mikeyのはシャレてクールだ。Rayのアルバムも彼にそっくり:じっくり考えた、細かいところまで気を配る、そして控えめ。
〝Frankの方が一番分かりやすいと思う〟と同感する彼。〝最近出したアルバムParachutesは彼がずっと作りたかったアルバムだった。僕のアルバムにはちょっと驚く部分もあると思う。もっとギターが出るんじゃないかなと思っちゃう人がいるかもしれないけど、僕をよく知る人なら驚かないだろう。アルバムの音楽性にフォーカスした。僕はそういうことを大切にしてる、だからこそアルバムに入ってるんだ。〟
以前のバンドメイトにアルバムを聴かせて、意見を求めた。〝僕らはみんな連絡取り合ってるよ〟と彼。〝Gerardはこのアルバムに不可欠だった。彼とよく相談した。ボーカルにリアリティーがあったかどうかよく彼に聞いたし、いつも相談に乗ってくれた。
アルバムは11月18日に自主制作でリリース、そして現在は組んだばかりのバンドとリハーサル中。来年の頭からツアーを予定して、2017年の終わりにもライブを追加するという。
彼がバンドメンバーの中で最後にソロアーティストとして旅立つというのはなんだか彼らしい。静かで思いやりのある、几帳面なRay―全てが完璧になるまで時間をじっくりかけたメンバーだ。