2015年1月13日火曜日

【ray】 Team Rock取材

取材者:Tom Bryant
翻訳:@postmcrjapan

元マイケミカルロマンスのギタリスト、10代女性の自殺に影響され曲をリリース


Ray ToroがLeelah Alcronの死を知ったのは真夜中だった。自宅スタジオでソロアルバムの作業をしていた彼が寝る前にパソコンを立ち上げてブログを読んでいた。そしてLeelahの死を知った時、ショックを受けました。
Leelah Alcorn(17歳)が2014年の年末にシンシナティの実家の前でトラックの前に身を投げて轢かれて死亡。彼女はJoshという男として産まれたが、それが彼女の本当の自分ではなかった。彼女の遺書では〝4歳の時からずっと男の子の体に閉じ込められた女の子という気がした。その気持ちを表す言葉があるとは知らなかったし、男の子が女の子になれることも知らなかった。だから誰にも打ち明けずに、周りに合わせようとして男の子っぽいことをやっていた〟と書いてあった。

信心深いご両親は彼女の気持ちを受け止めることが出来なかった。Leelahがご両親に自分の気持ちを打ち明けたにもかかわらず、母から女の子にはなれない、〝神様は間違いなんかしない〟と言われ、学校から引き抜かれ、SNSも禁じられ、そしてセラピストへ通わされた。Leelahが言うにはセラピストもキリスト教で偏見を持っていて、やっていることは間違ってる、神様に救いを求めなさいと言われた。
遺書の最後に、彼女はトランスジェンダーコミュニティーに行動を呼びかけた。〝今年自殺をするトランスジェンダーの数に私の死もカウントされないといけない。誰かがその数字を見て、これおかしいぞと気づいて欲しい、そして改善に努めてほしい。お願いです、社会を改善して下さい。〟

Toroが最後の言葉に大きな衝撃を受けた。Leelahの遺書を読んだ後、彼は寝ようとしたが眠れなかった。彼女に何があったのか、そしてなぜ人は自分と違う人を受け入れることができないのか、しばらく考えてた。

〝彼女が自分の死に意味を持たせたいと書いたけど、ものすごく力強いお言葉だ。あんなに若かったのにあんなことが書けるんだなんて信じられない。レベルが違います〟とToroはLAの自宅で話す。〝彼女と同じ悩みを持っている人が大勢いるから、どうか彼女の願いが叶うといいですね。残念ながらこんな経験をしたLeelahが初めてではなく、そして決して終わりではない。〟

Leelahの死がこれほどToroに影響を与えたにはもう一つの理由があった。一年ほど前に彼が似てる出来事で曲を作ったからだ。アリゾナ州で宗教の理由でゲイやレズビアンなどの方にサービスを断る権利を経営者に与える法案に激怒したToroがギターで反論して〝For the Lost and Brave〟を作曲作詞した。そしてその時の気持ちが今回の自殺とトランスジェンダーコミュニティーにも当てはまると彼は気づいた。

〝あの曲を一年ほど前に書いたのに僕の歌詞とLeelahの言葉を読むと似てるところがたくさんあってびっくり〟とToro。

虐げらる人々の話や差別される人々のニュースを読む度にToroが曲のリリースを考えてた。しかしなんだかタイミングが難しくて。レーベルと契約するまで待った方はいい、音楽業界のルールに従った方がいいと彼は思いました。

〝去年は妻や周りの人に曲をリリースしたいと話してた。ニュースを観る度に誰かが虐げれてる話とか、人が人を受け入れられない話ばかりだ。でもアルバムはまだ完成してなかったし、PVの何もないし。全てがレーベルと契約してから考えることだから、アルバムが完成されるまで曲をリリースしない方がいいと思った。〟

そして彼は思った。そんなのくそくらえだ。Leelahの話に心打たれた。彼女のためにもトランスジェンダーコミュニティーのためにも何とかしたい。だから1週間前にFor the Lost and Braveをネットで配信し、そして配信の理由を自身のブログに綴った。

〝Leelahの話は本当に心が痛む話だ。僕にも息子がいるので、人生はまだまだこれからだという若い子供が親に愛されず、サポートもされずにいたと考えると、すごく辛い気持になった。この曲はアルバムのPRのためではない、だってアルバムはまだ全然出来てないから。僕はただこの問題にスポットを当てたくて、そしてLeelahと彼女と同じ悩みを持っている方にサポートをしたかっただけだ。メッセージを出すなら今だと思った。〟

マイケミカルロマンスのメンバーとしてもToroは決して人権を求める社会活動家ではなかった。ほかのメンバーだってそうだった。どうでもいいというわけではない(実を言うとその反対だった)が、マイケミはそのために活動してたというわけじゃなかった。だからと言って人の窮状に無関心というわけでもなかった。Toroがマイケミの三枚目のアルバムThe Black Paradeへの反応やファンへのいじめ、特にメキシコで起こった変わった格好をしたファンへの暴行〝エモ反対運動〟に深く影響された。
マイケミ〝Sing〟の別バージョンを再収録した東日本大震災の募金活動プロジェクト#SINGItForJapanもToroのアイディアだった。

裏ではずっと人の窮状を深く憂慮してきたToro。しかし今は表で社会問題を主張する時がきたと感じた。
〝先日、人にポジティブなメッセージを送る責任はあるか聞かれたけど、マイケミメンバーの僕だったらきっとノーと答えたんだろう。その時は責任を取るのが怖かったんだ。息子が誕生したからか、ただ単なる歳をとったからか分からないけど、責任をとることがすごく大事だと思うようになってきた。だから曲をリリースしたかった。苦しんでる人をちょっと楽にさせること、トランスジェンダーコミュニティーの現実や問題に対する認識を高めること、そして一人でも多くの考え方を変えられることができるなら嬉しいです。〟
しかしトランスジェンダーコミュニティーの一員でもないのにこんなことを書く自分の立場が難しいと彼は認識してる。

〝トランスジェンダーコミュニティーの苦難が分かるという印象を与えたくない。永遠に分かることができないだろう。僕にできることは声を上げることと、自分の解釈を世に送り出すことさけだ。話題のニュースに便乗して曲を出したと誤解されるんじゃないか心配したけど、幸いトランスジェンダーコミュニティーも皆さんもすごく応援してくれた。それだけですごくやりがいを感じた。〟

曲はこれからトランスジェンダーコミュニティーのイメージがつきますが、もっと幅広い意味もあるとToroは信じてる。メキシコのマイケミファンに起こったことを見たからか、普段から周りの状況をよく見てるからか、かつてマイケミが〝Teenagers〟で訴えた旧世代が若い世代を受け入られないという深刻な問題がまだまだ解決されてないとToroは思う。
〝トランスジェンダーコミュニティーの苦難はユニークだが、若者の苦難に似てる部分もあると思う。誰だってありのままで愛されたいし、誰だってありのままの自分でいたい。なのに悲しいことにそれが理解できない人が多い。人のライフスタイルに賛成するかどうかを別として、そのライフスタイルを受け入れなきゃダメなんだって気付いてほしいです。〟

長男が誕生した2年前から色々考え始めたらしい。

〝もし息子が困ってたら、僕を信用してなんでも打ち明けて、そして力になれるなら力にならせてほしい。親や年配の方が若者を人をしてリスペクトせず、ネガティブに見ることが多い。妻がいつも言うけど、大半の親が子供を所有物として扱う。ほら、「ここは私の家で私のルールだからお前は従わないとダメ」とかさ。親は子供と対等な立場で接するべきだと思うし、人として付き合うべきだ。息子の未来は人と人の違いがもっと理解される世界だと願ってる。〟
ToroにとってFor the Lost and Braveは大事な曲だ。マイケミの時はGerard Wayが歌詞を書いて、そしてToroが音楽の大半を担当した。しかしソロになった今、作詞や一人で歌うことを学ぶ必要があった。インスピレーションに対しての考え方も変えざるを得ない大変な道のりだったが、For the Lost and Braveがそれを変えてくれた。
〝この曲は僕にとって大きなターニングポイントだった。書きたいテーマや好きなサウンドを絞り込むことができた。作詞や歌うことにまだ慣れてなくて勉強の日々だけど、一つ気付いたのは自分の人生に関すること、そして現在起きてることについてしか書けないことだ。僕は反応するタイプだから、突然歌詞を思い浮かぶのが難しい。ニュースを読むとか、映画を見ることで曲のインスピレーションになる時がある。苦しんでる人の立場から考えてロールプレイしてみる。〟

こういうプロセスだからこそ、自宅スタジオで1人作曲作詞、そしてレコーディングまでしたソロアルバムに時間がかかってる。最近ではマイケミのエンジニアDoug McKean(Gerard WayのソロアルバムHesitant Alienもプロデュース)やマイケミの最後のドラマーJarrod Alexander、WayのキーボーディストJamie Muhoberac、そして名セッションギタリストTim Pierceにもサポートとしてアルバムに参加してる。時間かかったけど、アルバムがほぼ完成だとToroが言う。
〝僕のChinese Democracy(Guns n' Roses)なんだ(笑)。本当に長い旅だった。早くやる人とゆっくりやる人、みんなそれぞれだから。今はラストスパートだから次はどんなプロジェクトになるか分からないけど、それも楽しみにしてる。〟

最初のPeter Gabrielっぽいアルバムからもっと明るいサウンドに変更して、夏リリースを目指して仕上げてるという。

〝変かもしれないけど、アルバムには車の窓を全開にして聴くような曲もあるよ。人がどんな環境で曲を聴くか考えると作曲がちょっと楽になる。夏っぽい曲もあるから夏までにリリースしたいね。〟

後はアルバムをレーベルに通してリリースするか、それとも別の方法でやるか決めるのみ。こういうのまったく慣れてないけど、数ヶ月かけて決めたいとToroが言う。

その前に、アルバムを完成させなきゃ。そしてもう一つ片付けておきたいことが。マイケミが解散してから、ToroのウィキペディアにソロアルバムのタイトルがMinimization Procedureだと書いてあった(ファンが投稿したらしい)。そしてこれがまた記事や本にも書かれた。しかしまったくの嘘だ。

〝アルバムのタイトルが全然違う(笑)でもね、皮肉でも結構いいタイトルだと思う。でも今回のアルバムにちょっと合わないね。マスロックアルバムにぴったりだと思うんだけどね。まぁ念のためちょっととっとくよ。考えてくれた人許してくれるといいけど(笑)〟


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