2016年10月26日水曜日

【Frank】Kerrang! Cover Feature: Frank Ieroのロングインタビュー

Kerrang! Cover Feature: Frank Ieroのロングインタビュー



取材:Kerrang!のJames Hickie

翻訳:@frankierojapan



The Black Paradeの10周年記念騒ぎでFrank Ieroが3年間もソロで活躍してることは見落とされやすいかも。果たして新アルバムParachutesは彼を以前の大成功の影から光へと導くアルバムになれるのか?タクシーの中でJames Hickieがその真実を直撃・・・


Frank Ieroに難しい質問を聞きたいなら、彼の年齢を尋ねてみるといい。去年の10月31日に―新アルバムParachutesのジャケットに幽霊2人が載ってるから誕生日がハロウィンだなんてぴったりすぎる―Frank Anthony Iero, Jr.が35歳としての生活に慣れ始めた。

〝10代の頃は自分がなんでも知ってると思い込むよね〟と始まるFrank。〝20代前半はあの時は何も分かってなかったけど、今は分かるって思う。25歳になると何もかも分かってないことに気付いて頭がおかしくなる。そして30になるとまた色んなことを知ることに。〟

知らないといけない大切なことのひとつはFrank自身の年齢だ。彼は35歳ではなく、34歳だった。

〝計算の間違いに気付くまで数ヶ月かかった〟とノースロンドンにある写真スタジオで行われるK!の撮影のために着てきたスーツのカフスを少し引っ張りながら笑うFrank。そのスーツは妻Jamiaと結婚式で着たスーツだと明かしてくれた。〝なんか1年間をなくしちゃったって感じで不思議だった。1年が過ぎた時点でまたその1年をもらえたらどれだけありがたいことか。〟

時間がどれほど早く進んでるかに敏感な彼にとってその1年がもらえたらきっとありがたいことでしょう。

〝子供が生まれた時、そして成長して性格が出るようになった時、俺は気付いたんだ。人がよくいう決まり文句やことわざは本当だから決まり文句になったんだ。時間がこんなにも早く進んじゃうなんて嫌だよ!あっという間に80歳になって病院で目覚めて何も覚えてないなんて嫌だ・・・〟

だからフランクはクリエイティブな非常手段を取り、リップコードを引っ張った。こうしてParachutesは生まれた。今年のもっとも野蛮で感情的、華々しいパンクアルバムであり、Frankの名前が付いてる作品の中でもっとも輝かしい。しかし彼が言うにはその制作がかなり大変だった。

ではこのアルバムは時間の流れを止めようとしてるのか、それとも今の時期を捉えようとしてるのか?

〝両方かな。このアルバムの中心となってるのが知ってることを違う角度で見ることだ。時間をかけて苦しみに感謝する、そして転び落ちるというのは成長できるチャンスだと気付くことだ。〟

Frankはジャケットを右肩にかける。あとは帽子とウイスキーを片手にしたら彼はニュージャージー人と名前の由来Frank Sinatraに見えるだろう。

〝俺はたくさんの時間を費やして10ステップ先のことや未来について悩んできた。死とかじゃなくて、だってあれは免れないけんね?それよりはやりたいことがやれるか、死ぬまで何ができるかの心配だ。今のこの時点で大事なのはクワンティーティー(量)よりクオリティー(質)だ。でも今は色々やってるからあまり説得力ないか。〟確かに。

忍耐は美徳だけでなく、Frankの新バンド名もインスパイアした。そして短いスパンでアルバムを次々出すFrankのファンにとってはありがたいことにあまり必要ないことだ。最初は2014年のアルバムstomachaches(frnkiero andthe cellabrationとしてリリース)、そして今年は2012年James Deweesと結成したDeath SpellsのアルバムNothin Above, Nothing Below。

〝Death Spellsをリリースしないってことはまるでビルを建ててるけど2階と3階がないような気持ちだったよ〟とスーツをスーツケースに入れながらFrankが言う。〝Parachutesへの扉を開けるにはまずそれを完結させんといけんかった。終わって次の週はRoss(Robinson、プロデューサー)とスタジオ入りした。〟

そう、Ross。彼の話はこれからだ。

〝いやぁ~あれは大きいぞ!〟とFrankがドラマティックに言う。

新曲I'm A Messと新バンド名(The Patience)と共にParachutesは9月7日に発表。バンド名変更の理由についてはFrankが〝自分の立場に違和感があって、そのぎこちなさがバレないように一緒にcelebration(cellabration)を連れてきた〟と説明。

その自己嫌悪はたぶんFrankの極めて内気な性格から来るだろう。その性格が商業的に大成功したアーティスト活動に役に立ったとはいえ、〝自分の頭の中に閉じこもりすぎて周りにおきてることがはっきり見えない〟とFrankが説明。

stomachachesの〝ぎこちない〟 再浮上したミュージシャンからParachutesの大胆なフロントマンへの変身は大切な人たちなしでは成し遂げなかったと彼は認める。まずは気付かずに彼を手伝ってくれた人:Cherry、Lily、とMiles。彼の3人の子供だ。子供が時間の経過が与えてくれるポジティブなことを喜びと共に鮮明に思い知らせてくれる。しかし去年の祖父の死はいつか全てがなくなること、二度ともどることはないことを思い出させてくれた。その日彼は〝全てを〟なくした。〝人生最悪の日だった〟と彼。曲9-6-15のきっかけにもなった。

 〝祖父との時間が取り戻せたら俺はどんなことだってする〟と彼は悲しく言う。〝この文句ばかり言う人生、当たり前だと勘違いしてる人生はそういう人とのひと時でできてるんだよ。〟

そしてFrankが積極的にサポートを求める人々もいる。それが彼の音楽に関わってるファンやバンドメンバー、コラボレーターとサポートアクトのみんなだ。彼らはFrankの進化を見守りながら次のステージへと導いてくれる。彼が言うにはcellabrationは新しい音楽を出した時に〝必要だった〟安定を与えてくれて、パフォーマーとして〝欠けてる部分〟もカバーしてくれた。その時から彼の桁外れの作業量と今夜ステージ(じゃんくて教会か)で見られる全身で表現する喜びからしたら、その必要はもないだろう。自分が思う欠点を乗り越え、彼は次の問題点に。

〝俺が当たり前だと思ってるモーメント(ひと時)だ〟と彼は告白。〝全ての瞬間は大切だという考え方を目指したい。忍耐さえ持てば毎日のイライラを抑えて、自分が今いるところをじっくりと楽しめるんだ。〟祖父のことを話した時の悲しい表情が一瞬戻る。〝悪いところだとしてもね。〟

バンドの改名はなんだか小説の新シリーズみたいだK!が言う。

〝いいね!〟と本をよく読むFrankが笑いながら言う。〝アルバムが出るたびに名前変えるよ。音楽プロジェクトだろうが、本だろうが、映画だろうが―なんでもあり!〟

今の状況を表すプロジェクトを作るならFrank Iero and the Packed Schedule(Frank Ieroとハードスケジュール)という名前を付けるだろう。パリから早朝のEurostarに乗ってロンドンに到着して、次の日は朝からアムステルダムへ。その2日後はシカゴのライオットフェスでパンクレジェンドThe MisfitsやBad Religion、The DescendentsとNOFXと共に出演。

パンクレジェンドといえば、Harry Rollinsの伝記は〝Get In The Van〟(バンに乗れ)というタイトルだが、Frankの場合はバンじゃなくて〝Get In The Cab〟(タクシーに乗れ)だ。あまりにも忙しいため、取材は今夜のWest LondonにあるKingstonライブへのタクシーの中で続行。 ランチに買ったクレープ(パリでクレープ食べなかったことを後悔してるらしい)を片手にFrankが元気にタクシーに乗車。

人を乗せる乗り物の中だからK!はParachutesのジャケットアート(2人の幽霊に抱っこされるちびFrank)を思い出した。幽霊なのか、それともパラシュートなの?

答えは両方だ。

〝俺らが愛すること、喜びと幸せをもたらしてくれることが俺らを救うものだとしたら〟と雨に打たれるフロントグラスを見ながらFrankが説明し始める。〝それを初めて体感する時はきっと生まれて初めて親に会う時だ。親は俺らを守るべき存在じゃけんね。アルバムアートに親を登場させんといけんと思ったけんこそこの写真をアーティストさんに送った。〟

そのアーティストはアメリカ人Angela Deane。彼女は昔の写真にある人物の上に幽霊を描くことに専念するアーティストだ。Angelaが言うにはそのプロセスが〝プライベートで特定した体験をオープンで共有できる体験にする〟。Parachutesの意図に似合いそうな考え方だ。 その意図はロック界で最も恐れてるプロデューサーの一人によって更に発展させられた・・・

Ross Robinsonほどミュージシャンに恐怖と興奮を感じさせる人は少ないだろう。

〝マイケミの時だって彼の名前はよく出たよ〟とKornのファーストとセカンドアルバム制作中にメンバーを泣かせたり、Slipknotのメンバーに植木鉢を投げつけたりした男についてFrankが言う。〝俺らは彼がプロデュースしたアルバムの話をして、「あんな人とアルバム作れるの??」「いや怖すぎるじゃろ!」ってなった。〟

怖いのは無理ない。Rossの心を突き刺す心理的メソッドは部外者にとって映画ハニバルでレクター博士がまだ生きてる男性の脳に切り込みを入れるワンシーンのようだ。

〝それ結構合っとるかも!〟と笑うFrank。〝だって彼が自分のプロセスをメンタル手術だと呼ぶ。彼にまつわる話はよく聞くよね・・・その話を読んでたらもう怖くて怖くてさ!アルバムをそういうサウンドにしてくれる人、俺を追い込む人と仕事したかったけど、俺に怒鳴ったりモノを投げ付けたりする人と仕事したいか?俺は何年もそんなの無理!って思ったけど、今回の曲には追い込む必要があった。〟

じゃ彼のメソッドって噂どおり激しいのか?

〝真実を知っとる今、彼についてどんな話を聞いても役に立たん〟と笑いながらFrankが言う。

はい、モノは投げられた。ありがたいことにバンドに植木鉢じゃなくて、ペットボトルの水やピスタチオを投げた。プロデューサーとの仕事についてポジティブな言葉を並ぶ中に〝消耗的〟という言葉も。制作中に何が消耗されたの?エゴ?自信?

〝そうなると思ったがね。彼がめっちゃアグレッシブで圧迫感のある存在だと思ったけど、その逆だった。彼があまりにもポジティブだからこそ、自分がもっとオープンになって、もっと頑張ろうと思った。俺を励ますような環境でレコーディングしたことがなくてさ。以前のアルバムの時にいつも自虐的だった。「お前を育つにはまず今のお前を壊す。お前の曲は下手くそ、もっと書け」みたいな。でもRossは絶対そんなのせんかったよ。自分がどう思うか別として、Rossがいつも今のお前は最高だって言うし、なんで最高なのかも見せてくれる。〟

最悪の自分が最高の自分というテーマはI'm A Messにも出る。曲はファンにとってParachutesから最初に聴いた曲なのにFrankにとってはアルバムで一番気に入らない曲だという。

〝パラシュートになってくれてることがたまにめちゃくちゃなことだ、そういう曲だ〟とFrankが説明。〝最初はさ、「え?それ最悪じゃん」って思うじゃろ?でも、もしこうなるはずだったら?自分でいることに自信持ってるなら他人なんてどうでもええやん。一番最高のは自分でいることだ。〟

そしてI'm A MessがFrankに教えてくれたのはミュージシャンとリスナーとの間のクリエイティブプロセスは〝肺のように生きてるものだ、循環的だ。〟曲は3年前、ファンとの出会いによって生まれたという。

〝stomachachesが出る1年前だったかな?チャリティーライブでプレイしてけど、ライブに来た人が俺にI'm A Messっていうピンバッジをくれた。(Sex Pistolsの伝説のベーシスト)Sid Viciousがつけたやつみたいなやつだったけど、ただそれだけの意味じゃないって思ったけんその人に劣等感や劣等感がいいことかどうかについて話してて・・・そして数年後に同じ名前の曲が出来上がったわけだ。〟

この出会いはFrankにとって、クリエイティブプロセスには〝全てが大切だ〟ということを証明した。 そしてParachutesのオープニングトッラクほど大切な出来事はない。その出来事は間違いなくRossがFrankによく聞いた質問によって引き出されたんだろう。

〝お前に起こったもっとも最悪の出来事は何だ?〟

Frankはちっとも進んでない。現在の彼はKing's CrossからKingstonのたった14.7マイルのドライブが日曜日の渋滞のおかげで大変なことになったと思ってるはず。しかしおかげで時間がたっぷり出来たから曲World Destroyerについてじっくり聞かせてもらうと思ったが、曲のきっかけとなった出来事については全く触れてくれない。

Frankが言った〝全てをひっくり返したような〟出来事って具体的に教えてもらっても・・・?

〝その必要ないと思う〟と彼が静かに、そしてきっぱりと断る。

〝その瞬間は俺の人生に大きな意味を持って、何度も何度も思い返してきた。アルバムが出るまでその出来事がどれほど大事なものか気付いてなかったよ。「ほんまに最悪じゃ」っていつも感じたし、ある意味でいまだに俺に大きく影響してることだけど、だからこそ曲の最後が大事だ、レコーディングを始めた時は最後を変えたけん大事だ。Rossと俺が自分が持ってるものについて話してた。人に与えるものこそが唯一自分が本当に持ってるものなんだって話を。最後の歌詞〝お前はお前の過去の奴隷なんかじゃない〟がその考え方から来た。〟

Frankがいうには、過去に縛られないのは子供の誕生のおかげだ。誕生した6年前より前に起こったことはあまり考えないという。だとするとParachutesのリリースより5日前にあるThe Black Paradeの10周年記念は当時のことを思い出せるではないでしょうか。実は以前のバンドのキャリアはあっという間に過ぎたという。Frankの今を楽しむ考え方のきっかけにもなった。

〝若い頃は、特にマイケミとツアーした時は、俺らはいつも下を向いて仕事してた。はい次!はい次!はい次!はい次!みたな感じでさ。もう何が何だか分からないまま過ぎてしまった〟と思い返す彼。

しかしその時代はファンが今でも大切に思ってる。自分のアートに通じて頭の上にあるMCRの影から出ようとしてるの?それとも新しい音楽を出してから隠れるカバーとして利用してるの?

〝ん~〟口の中ののど飴を反対側に移しながら考え込む彼。〝どっちもしてないと思う。あの頃を思い返すと映画を見とるかのようで・・・なんっていうか・・・〟彼は言葉を失う。

まるで他の人の人生みたい?

〝まるで他の人の人生みたい〟とFrankは言い返す。〝そう!ほんまにそれ!まずさ、こんなにも時間が経っとることなんて信じられん!そして本当に自信になる。こんなにも時間が経ってるのにこんなにも好きでいてくれるなんて本当すごい。それに自分が一緒に作ったことだし、非常に誇りに思ってることなんだ。こんなにたくさんの人がこんなにも大切に思ってくれてるなんて・・・ワオ!〟

Kingston通りの角にある今夜の会場―古い教会だ―で待ってるファンが見える。外で静かに待ってるファンを見るとFrankが微笑む。会場で結婚式が行われたため、昼遅くまで並ぶことが禁止されたことを聞いてびっくりしたという。車を停めると最後にFrankがこう振り返る。

〝全てのことが分からんでもいいような年齢になった〟とクールに言う。

自分の年齢を含めて、ですか?

〝自分の年齢を含めてだ!〟Frankが笑う。〝俺さ、もしかしたら今25歳で頭おかしくなってるかもしれんわ。とにかく俺はたくさん学びたいんだ。〟

Frankが車から出るとファンが彼に群がる。その光景を見てると、彼がファンのためにたくさんのアルバムを作ったことがよく分かる。しかしParachutesの場合は彼の能力と限界から汲み取った知識を使って他ではなく自分自身のためにアルバムを作った。


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